アスリートの引退。大きな喪失感からどう立ち上がるか?グリーフケアから学んだこと
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アスリートの人生を応援しています、森村ゆきです。
先日グリーフケアを学びました。グリーフとは「深い悲しみ」のことです。古くからの大切な友人が「みんなのグリーフケア」という団体を立ち上げて情熱を持って活動をしていて、その理念に共感をしたのと、これってアスリートの引退の時に起きることと同じだよね?と思ったので学びたい!と講座を受けさせてもらいました。

今日はそこでの学びや気づきをアスリートの引退と紐づけて書きたいと思います。アスリートで引退を考えている人、引退後、ずっと心の整理がつかない人のお役に立てるかなと思います。ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです!

改めて、グリーフとは「深い悲しみ」を指す言葉で、語源はラテン語でgravare「重いものを背負われる」という身体的苦痛も表す意味で、どうしようもない悲しみ、自分では背負いきれないと感じることだそうです。さらにいうと悲しみとは「大切なつながりが大きく変化し、その変化に対応できない状態」だそうです。私自身、実はこの歳になっても身近な人が亡くなったことがあまりなくて、悲しみに暮れるみたいな経験が実はないんですが、大きな喪失感っていうのは何度か味わっているので、自分に置き換えると大きな喪失感、今まであったものがなくなって、ぽっかり心に穴が開いてしまった、そういう状態をイメージして講座を受けました。

アスリートの引退はまさにこの状態だと思っていて、今までつながっていた大切なもの、いや、つながっていたというよりも、もはや自分自身でありアイデンティティとなっているもの、それがある日からなくなるのです。自分で引退を決められる選手もいると思いますが、戦力外ということで自分の意志に反して突きつけられる選手もいると思います。

人が亡くなると、身近な人にとっては、今まで当たり前のように話しをし、触れて、関わり合っていたのが、姿、形がなくなってもう2度と会えない状態になります。その人と共にした時間、一緒に行った場所、思いを寄せても、もうそこにその人はいない。思い出せば涙が出てくるそんな状態なんじゃないかと思います。

アスリートの引退も、なつかしの試合場所、ユニフォーム、道具、もうそこで活躍する自分はいない。そこには戻れない、なくなってしまったという大きな喪失感がありますよね。

人によってはうまく切り替え、次の人生を前向きに進める人もいると思いますが、どこか、後悔が残ったり、もっとできたのでは?とかさまざまな思いが頭をよぎる人の方が多いのではないでしょうか?

亡くなった人に対しても「あの時もっとこうしておけばよかったな」とか「もっと会っておけばよかったな」とかいろんな思いや後悔が頭の中を巡りますよね。つながりが強ければ強いほどその思いは強くなるものだと思います。

そんな悲しみの状態を五段階で表したものを今回教えていただきました。すごく整理されて、これを知っているだけでも自分が深い悲しみ、喪失感から立ち上がれない時、今自分が(もしくは大切な人が)どの段階なのかがわかり助けになるかなって思いました。

●ステージ1
 悲しみに凍りつき五感が麻痺
 ご飯が食べれなくなってしまったり、そのことにも気づかないくらい麻痺している。眠れないなど(周りの人が見ていてあげないと危険な状態)
●ステージ2
 悲しみの責任を負い、自分を責めるとき。
 「あの時自分がもっとこうしていれば」「どうして◯◯してあげなかったんだろう」など
●ステージ3
 悲しみに混乱し、他者に感情的になるとき
 「どうして◯◯してくれなかったの!」「なんで自分だけがこんな目に!」 
 と他人に攻撃が向く
●ステージ4
 悲しみを理解し、抱きしめる時
 ここで言語化が起きる。自分に何が起きたのか?理解し始める
●ステージ5
 悲しみを抱えて、次の扉を開ける時

こうやって体系的に説明してもらうと、悲しみに暮れている人が今どの状態なのかがわかっていいなって思いました。
アスリートの引退後はステージ2くらいが多いんじゃないかなと思います。後悔に苛まれ、特に戦力外になった選手は「もっとこうしておけば」とか「あの時この選択をしておけば」という状態になると思います。実際、そういう選手を何名もみてきました。また、整理がつかないままステージ3に長く居留まってしまう人も多いです。元いたチームの悪口を言ってしまったり、戦力外にした監督への不満を漏らしたり、就職しても環境や人の文句を言ってしまったり愚痴っぽくなってしまう。こういう選手にもたくさん出会ってきました。すごく残念だなって側から見ると思われがちですが、この状態ってステージ5の方向へ回復して行っている途中なんですよね。ただ、ここからステージ3→4→5と行くのが一人の力だとなかなか難しいよな、と自分の経験からも思います。

ステージ4は言語化して自己理解が進むわけですが、アスリートは言語化が苦手な人が多い。(そうじゃない人が沢山いるのも知っていますが)なので、自分の起きたことを言語化して人に伝えたり、整理をするのが苦手でステージ4に進むのがなかなか難しい人がいるのが私の体感だったりもします。

私はここ数年アスリートの引退後のキャリアについてコーチングをしておりますが、話すことでステージ2が3になり、4になり、最終的にはちゃんとみんな次の扉を自ら開けて再び情熱を向けられるゴールに向かって走っていけています。

また他の記事でも書こうと思いますが、アスリートが引退を機に凹んだままっていうのはとても残念だなって思うのです。選手だった時が人生のピーク、というのではあまりにも悲しすぎます。だって、人生って引退後の方がずっと長いのですから。

ある程度時間はかかると思いますし、後悔したり、悩んだりする時間は出口が見えず苦しいもんです。アスリートはストイックなところがあり、人を頼るとか弱みを見せるのが苦手な人も多いと感じます。でも、落ち込んだ状態から出るために人の力を借りる、話してみることは回復を早め、結果自分も周りもとても幸せになると思うのです。

グリーフケアの講座では、実際に自分に起きた悲しい出来事を話すワークをやりましたが、過去は変えられる、過去を味方にすることができると体感しました。過去の体験を話すことで自分自身とより深くつながる。悲しみの奥にあった本当に大切なものが認識でき、繋がり直すことができるというのです。悲しいけど悲しいだけじゃなかった過去に物語を織り直すことができるのです。

大切な人、大切な競技者である自分を失ってしまった。もう取り戻せないという悲しみが最初はしばらく続くでしょう。でも話していくうちに、本当に大切なものは失っていなくて自分の中にちゃんとあるんだ、と受け取ることができるようになるのです。

グリーフケアとはどうしようもない悲しみに
「愛と尊敬を持って寄り添うこと」

どんなことがあっても また 自分を愛し、大切にして、歩き出す
自分を信頼し、もう一度世界を信頼して扉を開くことだ

と藍ちゃんは締めくくってくれました。私もアスリートの引退前後の相談を受けていますが、まさに愛と尊敬を持って寄り添いたいと思います!

最後に私が引退前後のアスリートの相談に乗ろうと思ったのは、100人以上のアスリートにヒアリングをしてきて、引退し、社会人になってからもなんとなくわだかまりが残ったままの人や、本当の意味で次へのスタートを切れていない人を多く見たこと。その方々に聞くと引退前にも引退した後にも相談したことがないという事実でした。愛と尊敬を持ってちゃんと話を聞ける人がいたら、きっと引退後も競技者の時のように輝く人生のスタートを切れるのではないかと思うのです。

グリーフケアも、アスリートの引退前後の相談も、今必要な人に届きますように。

最後までお読みいただき本当にありがとうございます!

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今まで関わったアスリートの方でも、もし引退となり、整理がつかないなという方が思い出してくれたりするといいな、とも思います。

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グリーフケアについてのインタビュー

以前「みんなのグリーフケア」の代表森田藍子さんにインタビューをさせていただいた時の動画を貼っておきます。興味ある方はぜひみてみてくださいね!

https://www.youtube.com/embed/xdAT_1z6W8o?rel=0

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